事例7日常会話はできるようになったが教科学習の意欲につながらなかったケース
対象:フィリピン出身女子児童(10歳)
- 子どもの状況
-
- 3月来日。日本語が全くできないことやフィリピンでの学習習慣がついていないことから、学年を1つ下げて4年に編入することも一時は検討されたが、結果的にクラスの雰囲気が落ち着いており年齢相応の5年に編入。
- 家庭では日本語を話す機会があまりない。
- 支援計画
-
- 目的:早期適応支援と日本語の初期指導
- サポーター:フィリピン出身者
- 内容:タガログ語を使っての日本語指導
- 期間:4月~7月(2時間×週2回×17=68時間)
- 方法:サポーターと別室で学習(取り出し)
- 経過
-
- 当初、取り出しでタガログ語を使っての日本語指導を予定していたが、当該児童がクラスメイトと一緒にいたいという気持ちが強く、クラスから離されることをとても嫌がったため、入り込みによる授業の通訳と教室の隅での日本語指導に変更。
- 担任の先生は教室中にタガログ語のあいさつの言葉を貼り、フィリピンの言葉や文化への理解をクラスメイトに促す配慮を行った。
- サポーターは当該児童とクラスメイトとの橋渡しを行った。
- 結果
-
- 担任の先生のきめ細かい配慮と母語話者の寄り添いにより、3か月で見違えるほど日本語の日常会話力が上達し、クラスになじむことができた。
- 反面、学習の面では自力で教科内容を学習しようという意欲にはつながらなかった。
- 振り返り
-
- 当該児童は学習の習慣がもともとついていなかった上に、年齢相当の学年に編入したため、当該児童にとって学習内容が難しかったこともあって、自主的に学習に取り組む意欲を持たせることが難しかった。また、とても親身に世話をしてくれるクラスメイトに依存する傾向が見られた。
- ポイント
- 日常会話を身につけることは容易にできても、学習のための日本語を身につけるためには本人のさらに大きな努力が必要であり、そのための支援も難しくなる。