福島県在住の外国出身の方に聞く「外国人の目を通して見た福島!」の第13回。

今回、お話をうかがったのは、フランス出身の研究者Pierre-Alexis Chaboche(ピエール=アレクシス・シャボシュ)さんです。
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名前:Pierre-Alexis Chaboche(ピエール=アレクシス・シャボシュ)
出身:フランス
職業:日本学術振興会外国人特別研究員(福島大学環境放射能研究所)

【自己紹介をお願いします。】
私は、パリの南西90kmほどのところにある「シャルトル」という町で生まれました。ゴシック建築で有名な世界遺産「シャルトル大聖堂」がある町です。2022年の7月に日本に来て、福島市に住んで2年になります。日本の他にも、インドに3か月、ブラジルに半年ほど住んだことがあります。

【福島に来たきっかけを教えてください。】
福島に来る前は、パリ・サクレ―大学というところで環境科学の研究をしていました。専門としていたのは、土に含まれる放射性物質から、土壌の移行や浸食のプロセスを調べること。原発事故があった福島は、学術的に興味をひかれる土地でした。それで、卒業後のキャリアについて考えたとき、福島で研究してみたいなと思ったんです。日本学術振興会のプロジェクトに応募して、福島大学の環境放射能研究所で、2年間の研究活動を行うことになりました。

【放射性物質に関連した研究をしているとのことですが、浜通りに出向いて調査をすることもありますか?】
あります。土や川の水といった試料を採取するため、いわゆる「帰還困難区域」と呼ばれるエリアに入ることもあります。13年が経って、復興も進んできていますが、震災の傷跡を感じる光景もまだまだ残っています。住む人がいなくなった家や、積み上げられた除去土壌など。そういったものを見るたび、被害の甚大さや悲惨さについて考えさせられます。

【日本で驚いたことはありましたか?】
日本人の「秩序正しさ」には、今でも驚かされます。例えば、朝の整列乗車とか。きちんと並んで電車を待って、降りる人を通してから乗り込む。すごく、日本らしい光景だなと思います。それから、よく言われることですが、日本とフランスでは、働き方がずいぶん違うかな。日本は、職場で過ごす時間がすごく長いなと思います。

【福島のどんなところが好きですか?】
福島の好きなところは、人と人とのつながりですね。例えば、地元の居酒屋なんかに行くと、居合わせた人が一体となって時間や空間を共有していて。「どこから来たの?福島で何をしてるの?」と話しかけてくれたり、「この店はこれがおいしいんだよ」と言っておすすめをごちそうしてくれたり。大都市にはない「暮らし」があるなあと思います。ここでの生活が長くなって、今では自分も、その一部であるように感じます。地質学者なので、吾妻山の風景もお気に入りですよ。

【福島に住んでいて、難しいなと思うことはありますか?】
英語では得られない情報も多いので、イベントなどの情報を逃してしまうことがあって残念だなあと思います。福島って、観光の可能性に満ちたところだと思うんです。東京からのアクセスもいいし、温泉も、自然も、スキー場もたくさんあって。震災のことを学べる伝承施設もできていますし。情報へのアクセスが容易になれば、もっとたくさんの人に福島の素敵なところを知ってもらえるんじゃないかなと思います。

【フランスのものが恋しくなることはありますか?】
カフェのテラス席が恋しいです。天気のせいなのか、日本ではテラス席ってあまり見かけませんよね。

【最後に一言】
日本で出会ったみなさん、楽しい時間や素敵な思い出をありがとうございました。あと少しでフランスに帰国しますが、旅行でも、仕事でも、きっとまた戻ってきたいと思います。自分にとって福島は第二の故郷ですから。
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ピエール=アレクシスさん、お話を聞かせていただき、ありがとうございました。これからも、研究活動がんばってくださいね。ご活躍を応援しています。